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とうふのホルモン

ホルモンのままに。主成分はエッセイ。

幸福な寝息【時々書きたくなるエッセイのようなもの】

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今朝方のことだ。と言っても、ついさっきのことだから、9時頃のこと。

水曜日は夫の会社がお休みの日だ。夫は、目覚まし時計に無理やり起こされて、眠い顔で歯を磨き髪を整え香水を振り掛けスーツを着こなしてそそくさと家を出ていくなんてことがなく、体が自然に起きるのにのみまかせ眠りこけている。

わたしはというと、バイトがある日は夫よりも先に家を出るのだが、そうではない日はそそくさと出ていく彼を見送った後の、ひとりぼっちの家の広さに耐えられず、もう一度布団にもぐったり、ソファに寝転んでぼーっとしていたりしているうちに1日が終わってしまう。一方で、水曜日は、カーテンの隙間から漏れる朝日に、すっと自然と目が覚める。隣に眠る男の寝息に安心して、そっとベッドを抜け出し、洗濯機を回し、本を読み、こうして今モノを書いている。

無防備な顔で眠る男の寝息。その一定のリズムの、なんと心地いいことだろう。布団は一晩分の2人の体温でえも言われぬ温かさで、カーテンの隙間からうっすら差し込む朝日で部屋は薄明るく、窓の外でスズメの鳴く声と、隣の男の息遣いだけが聞こえる。朝が運んでいく慌ただしい世の中から、この部屋だけが切り離されてぷかぷか漂っているみたい。

この時間が、永遠に続けばいいのに。

そう思った瞬間、ハッとする。「いけないいけない」。理屈ではない。わたしの中に巣食う「いい子ちゃん」の声でもない。今、わたしは完璧に満たされてしまっている――。そのことに対して、わたしの人生を平凡から遠ざけてきた気まぐれなホルモンが、警鐘を鳴らしているのだ。いいのかそれで。満たされてしまって、もうこれ以上何もいらないだなんて、思ってしまって、お前はそれでいいのか?と。

目覚めの効果はテキメンだ。退屈でいてもたってもいられず、がばっと起き出す。まずは洗濯機をまわす。靴下は別にして、あらかじめもみ洗いをする。コンタクトレンズをつける。それから、それから――。

そのうち彼も起き出してくるだろう。そして不満たっぷりに言うだろう。「いつの間にいなくなって、何してたの?寒かった。」毎週毎週繰り返されるこのやり取り。わたしってそういう女なんだろうなあ、と自分で思う。

あ、ちょうど今、洗濯機が洗い終わったとピーピー鳴った。