読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

とうふのホルモン

ホルモンのままに。主成分はエッセイ。

トイプードルは人を選ぶ【時々書きたくなるエッセイのようなもの】

エッセイのようなもの

飼い犬は見た目や性格が飼い主に似るなんて話がある。長く一緒にいるうちに似てくる説が有力かもしれないが、わたしの仮説は、犬も人も、選ぶ段階でちゃあんと自分と似ている者をお互いに選びあっているのではないか、というものだ。

 

大学生時代のこと。家庭教師のアルバイト先に、あるときトイプードルの男の子がやってきた。確か家庭教師2年目、教え子の女の子が中学3年の頃。ブリーダーをやっている知り合いから譲り受けたとかで、生後1ヶ月くらいのちっちゃな子犬の頃に、わたしも初対面を果たした。名前はレオ。赤茶色の巻き毛が柔らかくて、子犬の頃は両手のひらに乗りそうなサイズ。ほんとうにぬいぐるみみたいに可愛かった。大きくなってからも勿論可愛かったけれど、だんだんイタズラが大好きになってきて、勉強を妨げるためのあらゆる手段に何度も悩まされてきた。

f:id:nomatterxxx:20160920141505j:plain

http://www.gatag.net/08/20/2009/230000.html、Photo by Yasuhiko Ito)

 

そこから約3年にわたって週に1度か2度、90分とか2時間とか顔を合わせていたし、わたしもイタズラ好きな彼のことを可愛いと思っていたからこそ、諌めるのに苦労したくらいだ。休憩時間には、おやつをあげたり頭を撫でたりして可愛がってい仲良くしていたつもりだ。誕生日にはおやつのプレゼントも買っていった。

 

それなのに、どうしたことか、レオはわたしがあの家を出ていくたび、わたしに関する記憶をなくしてしまうようで、最後の最後まで、「こんにちはー」と訪ねていくたびに毎回「ワンワンワンワン!!!」と超激しく威嚇されてしまうのだった。明らかに、宅急便のお兄さんが来たときと同じ反応……。「レオくん、先生だよ~?」と教え子も言ってくれるにも関わらず、毎回それなのだ。レオの気が済むまで匂いを嗅がせたりして10分ほど待つと、ようやく落ち着いてくれる。まだ落ち着いていない段階でこちらからレオを触ろうとするものならば、あわや噛まれそうになる(実際、一度中指を噛まれて痛かった)。ちゃーんと、落ち着いたあとは仲良くしているはずなのになあ。

 

教え子は「レオはバカだから覚えていられないんだね」って言ってくれていたけど、でも薄々、わかっていた。わたしとレオの不仲のもっと根本的な原因。それは、きっと彼には、わたしが彼のことを心の底から「カワイイ~!!」と思っていないのが不服なんだろうなあ、と。

一応断っておくと、トイプードルが嫌いなわけではない。でも、正直に言えばわたしは犬ならラブラドールやサモエドのような大型犬、あるいは柴犬のような中型日本犬がどちらかといえば好きなタイプだ。もっというと、ほんとうは犬よりも圧倒的に猫、猫派閥側の人間なのである。

思うに、トイプードルとかパピヨンとか、小型犬のカワイイわんちゃんを飼っている飼い主さんは、大抵彼らを目に見えて溺愛しているような気がする。平仮名でも漢字でもなく、カタカナで「カワイイ~!」って言っているような。そう、彼らは、そういうタイプの人から選ばれるのであって、彼ら側もそういう人を選んでいるに違いない、と思うのです。

つまりレオくんは、普段教え子の女の子やその友達からいつも熱烈に可愛がられているはずなのであり、そんな中にわたしのうっすい「レオくんかわいいね~、よしよし」なんてのは、「こんなの全然愛情じゃねえや!」ってなもんなんだろう、と思う。そして実際その通りなのだから、反論のしようがない。そして後半の仲良しも、「なんかご主人とずっと話してるし仕方なしに仲良くしてあげよう」という適当なものなんだろう、わたしも、結局は上辺だけの、彼からしてみれば「適当」な構い方なのだから。

 

そんな感じで、わたしとレオくんの関係をもうほとんど仕方ないものとして諦めつつあった終盤の頃のこと。その日の指導を終えて教え子の家を出たあとで、忘れ物をしたのに気がついた。わたしは忘れ物の常習犯で、いつもだと次行くまで忘れたことにも気づかなかったり、電車に乗った後に気づいたりして諦めたりなのだけれども、このときはまだ出てから5分も経っていなかった。なのでもう一度家まで戻って、インターホンを鳴らした。

「ごめんね、先生忘れ物しちゃったみたいー!」

教え子が笑いながら、快く開けてくれた。そのとき。

「ワンワンワンワン!!!」

レオだ。扉があいてわたしが目に入った瞬間、廊下を一直線にこちらに駆けてきたのだ――無論、熱烈な歓迎ではなく、いつもどおりの、激しい威嚇の表情で……。

このときばかりは、ものすごく凹んだ。なんで?つい5分前まで、一緒だったじゃないかー!つい5分前まで、ご主人と一緒にバイバーイ、ってやってくれてたじゃないか?そんなに、わたしのこと、一瞬で忘れちゃうの?あるいは、「またコイツ来たのかよ!!」ってこと?どっちにしろ、ショックすぎる……。

 

そんなこんなで、わたしはこれまでにトイプードルやチワワやパピヨンに好かれた覚えがない。小型犬ほど知らない人を警戒して吠える傾向にあるんだろうとも思うけれど、ここまで仲良くなれないものなのかと思い知らされた。

絶対に、奴らは人間を選んでいる。もし、こんなわたしを好きになってくれそうなトイプードルの飼い主さんがいらっしゃいましたら、ご一報ください。わたしといたしましては、1番ではないにしろ、トイプードルも可愛いなあと思っているよ……!