とうふのホルモン

ホルモンのままに。主成分はエッセイ。

怖くておいしい【時々書きたくなるエッセイのようなもの】

とうふです。「金曜ロードショーもののけ姫!」とさんざんワクテカしていたけれど、結局金曜の夜は、夏休みに入った吉田くんが「行きたい」というので夜釣りをしていた。

 

※吉田くんとは、私とうふの長年の恋人であり現在ニート・とうふを家に住まわせてくれているただのイケメンである。

 

インドアな吉田くんの唯一アウトドアな趣味が、釣りである。彼はコスパ厨なので、おそらくは「ただで食材が手に入る」ことが嬉しいのだと言う。が、今のところ釣った魚よりも道具や餌にかけているお金の方が大きいと思う。別にいいのだ。それが趣味というやつだから。

 

わたしたちは基本的に一緒に過ごしたい欲求が1番強いから、それぞれが好きなことをするよりも一緒に何かをすることが多い。わたしは今ニートだし、もののけ姫はいつでも見れるし、(若干の涙は飲みつつ)釣りに付き合うことにした。

 

わたしが仕事を辞めて、これを機にと吉田くんが海の近くに引っ越して、何回か一緒に釣りに出かけている。

投げる瞬間釣り糸がシュッって空気を裂く気持ちよさとか、星を眺めてぼーっとする時間とか、待って待って待ち続けて、ようやく手応えを感じたときのワクワク感とか。

そういうのを差し引いてもわたしはまだどうしても釣りを好きにはなれないでいる。

 

まず、生き餌(青イソメとか)は気持ち悪くて針につけられない。なのでわたしはわたし用に買って冷凍のエビ(オキアミ)を使うことにしているのだけれど、魚たちもグルメなのか、オキアミだとなかなか釣れない。吉田くんに付けてもらって青イソメに変えた途端釣れたりする(普段は面倒だからと付けてくれない)。次々釣ってる人の横で、ただぼーっと待っている不毛さと退屈さったらない!

 

釣れてもそれはそれでしんどい。

地面に引っかかったかな?と思ってリールを巻くと、頑張ったら意外と引けたりして、それでようやく「あ、これ魚だ」って気づく。釣ったことない人、釣ってみたらわかると思う、一瞬地面かと思うくらい、重いのだ。とはいえ一生懸命巻いてみると、それほど大きくもないフグ(食べられない)だったりする。しかし小さいフグでも、生きてるから、精一杯抵抗するから、想像している以上に重いのである(釣り番組で何十センチの大物を釣ってる人たちはすげえな、と思う)。

そしてようやく引き上げたと思うが、針を外そうにも精一杯抵抗しているフグを前に、わたしは立ちすくんでしまう。ビチビチ跳ねるフグの躍動に、うわー生きてる!生きてる!って戸惑ってしまう。虫と遭遇した時の怖さとは違う。そういうわけで、わたしは触ることもできず、わーきゃー言っているだけなので、仕方ないから吉田くんが針を外してバケツに入れるところまでやってくれる。それでようやくドキドキが収まる。

バケツの中で泳ぐフグを見れば、とてもかわいいと思う(わたしは水族館もジブリ並みに語れるくらい大好きだ)。

 

食べられる魚は持って帰ってきて、締めるのは吉田くんがやる。死んだな、と思ったら、そこから先はわたしもできるので、処理をする。

 

たぶん、一匹の魚という存在が、〈生き物〉と〈食べ物〉っていう、大きなカテゴリーを、いとも簡単に越境する、そういう不気味さ、気持ち悪さがあるんだと思う。

そういうわけで、もし吉田くんが釣りに飽きたら、わたしは二度と釣りはしないと思う。

 

とはいえ、釣った魚はやっぱりおいしい。ちょっとしか釣れなくても、自分たちで釣った魚はすっごくおいしい!

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ごちそうさまでした!