とうふのホルモン

ホルモンのままに。主成分はエッセイ。

海辺の穴熊【時々書きたくなるエッセイのようなもの】

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(写真はカワウソ)

 

マッサージチェアを買った。ここだけの話だ。まだ職場の人にも家族にも言ってない。とうふではないリアルな「わたし」の知り合いには、誰にも言ってない。だからここだけの話。

 

最近はそこそこなお値段で手に入りやすい機種も出ているけれど、買ったのは定価30万の割とちゃんとしたやつだ。ちょうど型落ちのタイミングで予算内になっていた。ラッキーだった。

 

昨年「買ってよかったもの」の記事でマッサージクッションを紹介したが、これがものすごくよくて、サステイナブルにはたらく上でわたしたち夫婦には不可欠な存在だった。

そこで考えた。

「こんなにも毎日毎日使うなら、いっそ、マッサージチェアで同じ時間かけて全身を揉みほぐしたらヤバイのでは?」。

 

何度か家電量販店に足を運んだ。購入する気なんかきっとない人たちがくつろぎまくる売り場で、真剣に吟味する二十代夫婦(童顔のオプション付き)のわたしたちはいろんな意味で異様だったんじゃないかなあ。買うつもりのときのショッピングは楽しい。おじさんがつきっきりでいろいろな機能を教えてくれた。

 

マッサージチェアを迎えるにあたり、掃除機をかけ、安物のソファを動かしスペースを作って、毎晩マッサージチェアを楽しめる生活の到来を今か今かと待っていた。投資した分を取り返すためにも、「1日の使用料を100円にして貯金箱に貯めよう」という決まりを作った。この待つ時間が、また楽しい。

 

そうして昨日、ようやくマッサージチェアが我が家にやってきた。あらかじめ「すごく大きいだろうな」と想像していた分なのか、置いてみたら「意外とそうでもないな」と思えた。

使い心地は言わずもがな。わたしは今これをスマホで書きながら、うきうきの帰路にいる。

 

1年前、この家に引っ越してきて、ベッドを買った。冷蔵庫を買った。ドラム式の洗濯機を買った。ダイニングセットを買った。ソファを買った。……いろんなものを買っては、巣穴に持ち込み、気づけば海辺のこの家は、すっかり「わが家」の顔付きになった。

 

昨晩ダブルベッドに寝転んで、ふと思った。

「大学時代に住んでた部屋って、この寝室よりせまかったよなあ」。

そう。大学時代は、せまいワンルームに彼が転がり込んできて、ひっついてしまいそうなくらい近くにいたのだった。「よくそんなにずっといられるね」と、感嘆と皮肉とはんぶんはんぶんに言われるくらい。「それでお前はいいのか?」って問う人もいたくらい。

ひとつ間違いなく言えるのは、そんなふうに「自立ってなんなのか」「わたし個人はどう生きたいのか」って問い続けて、その問いを無視せずにいて、それでも一緒にいてここにいる。

 

今のわが家は2LDK。ずいぶんと大きな穴になったものだ。安心して踏み出して行ける場所。外に向かってわたしを開く元気をくれる場所。そんなふうな、二人の身体にぴったりの穴を、二人で作るのが今楽しい。

 

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